14.発表会であの世がみえたNさん
60代の男性、Nさんは、とてもあがり症でした。普段のレッスンでも小刻みにふるえてらっしゃるような方でした。そんなNさんのはじめての発表会でのことです。
出番待ちのとき、「僕が舞台で倒れたら、この首のペンダントのカプセルを開けて飲ませてください。中身はニトロです」とおっしゃいました。「じゃあ、すばやくふたを開ける練習をしておかなきゃ」と、私がNさんの胸元に手をやった瞬間に、司会がNさんの名前を呼びました。Nさんは半開きのペンダントを首にぶら下げたまま、舞台の真ん中に向かって歩いて行かれました。
演奏中のNさんの指は、ずっと震えていました。足も震えていました。滝のように汗をかき、よく見ると肩も頭もプルプルしています。とにかく身体全体が震えていました。それでも何とか演奏を終えられました。
真っ青な顔をして放心状態で舞台そでに戻ったNさんは、「床が水浸しだったね。それで、向こうに母親がいたよ。でも、母親はもう死んでいるのですけどね。ひょっとしたら、あれが三途の川かも知れないな」と、おっしゃいました。それを聞いて私はゾッとしました。
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