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元生徒さんの喪中はがき

昨日、喪中はがきが届きました。それで、10年近く前に辞められた生徒さんが、春に亡くなられてたことを知りました。享年80歳でした。


(c) .foto project


元生徒さんは「明石さん」という男性です。明石さんは、私に「成人のピアノ教育の研究をしたい」と思わせてくれた、まさに最初の方です。

10数年前私は、ヤマハYP講師を辞め、できたばかりのヤマハPSTA大人のピアノ指導者になりました。指導者養成講座を受けて私は「これこそ理想の大人のピアノ指導だ!」と思い、当時うちに来てくださってた生徒さんを集めて、自分の教室で説明会をしました。

説明会の終わり頃、突然明石さんが、「先生、本を順番にやって行くのは嫌ですわ。わしは、自分の弾きたい曲だけ弾けたらええんです。グレードとかいりません」とおっしゃったのです。他の参加者もそれに頷いてらっしゃいます。

「この教材はPOPSとクラシックが段階的に学べる素晴らしい教材なんです!それに、グレードを取るという目標もあります!ヤマハはご存知のように大手の楽器制作会社です。そこのグレードが取れるのですよ」と、私は一生懸命話しました。でも、生徒さんには受け入れてもらえませんでした。

そのうち明石さんが「先生、そのPSTAとかいう講座は高いんでっしゃろ?うあははは!もったいないことしはったなぁ。皆さんどうでしょう。みかん先生が気の毒やから、飲み会でもしましょうか」と呼びかけられたのです。私は嬉しいやら悲しいやらで・・。

結局飲み会に参加してオゴってもらい、結局今の生徒さんの間では、PSTAの教材は使わずレッスンをすることになりました(笑)

明石さんは、その後白内障を煩い、変形膝関節症の手術の際にピアノをやめて行かれました。トータルしてうちには10年近く来てくださっていたことになります。

ヤマハPSTA教材と指導法については、いまでも私は素晴らしいと思っていますし、今はレッスンでもスタディを使用している方もいます。でも、成人のピアノ学習は、それだけではないんですね。今なら当たり前のことですが、当時の私には、それが理解できなかったんです。

ピアノの先生とは、教材をもとに生徒さんを目標にむけて引っ張っていくものだという固定観念があった。大人のピアノ指導はそれだけじゃだめなのです。

明石さんへ
「この音符は何拍ですか?」と聞いたら、必ず「二泊三日」と言って笑わせてくれた、明石さん。

「堺市金岡町 三上ピアノ」という住所だけで、旅行先のイタリアから絵葉書を送ってくれた明石さん。その絵葉書が、無事届いたことを知って、一番驚いていた明石さん。

「オペラを聴きにいってきます」と、突然ウイーンに飛んだ明石さん。
そこで、なぜかイギリスのオックスフォード大のTシャツを買ってきてくれた明石さん。

アレッサンドリーニのオルガンコンサートで、開演のベルと同時に寝て、終演の拍手で起きた明石さん。

半年間で、乙女の祈り(簡単アレンジ)が弾けるようになった明石さん。
でもその後の9年間、まったく練習しなかった明石さん。

明石さん、私はあなたから、大人の人を指導することの難しさを学びました。でも、その裏側に、難しさの倍以上の楽しさがあることを学びました。

明石さん、あなたは、私が『趣味のピアノ学習者が満足するピアノ指導はなにか』ということを考える機会をくれた、最初の方です。
私はあなたから、かけがえのない人生の目標をもらいました。

ありがとう、明石さん。さようなら。


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