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高齢者と猫問題

2020年末、独り暮らしのAさん(85歳女性)が、
自宅で未手術の7匹の猫を世話していることを知った。

シャム3黒猫

内訳は、成猫2と5匹の仔猫(当時7カ月だったので、かなり大きい)。
家の内外を行き来する昔ながらの飼い方で、人慣れしていない「家庭内野良猫」

このまま春を向かえると、猫は爆発的に増えて飼育崩壊になってしまう。
それよりすでに、高齢のAさんひとりで7匹の猫の世話は、限界だ。

何とかしなければ。。

南河内ねこの会とAさんと私


私は南河内ねこの会の代表、Fさんに相談した。
Fさんは、すぐにAさんに連絡をしてくれた。

Aさんは、「手術は猫らしさがなくなってしまう」「年金生活で手術費が出せない」
と話したそうだ。
それでもFさんは、一生懸命説得してくれた。すべては猫のために。

説得の甲斐があり、Aさんは猫を手放すことを決心してくれた。

その後のFさんの行動は、早かった。
猫の捕獲→大阪市内での避妊去勢手術→感染症検査と寄生虫の駆除

そして成猫1匹をリリース。

5匹の仔猫は、Fさんが猫ともクラブへの呼びかけで、Fさんと預かりボランティアのもとで人慣れ訓練へ。
母猫(ロンちゃん)は、しばらくの間うちで家猫修業のために預からせてもらった。

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母猫ロンちゃん。可愛い顔をしていますが「シャー」と言います


Aさんのこと


誤解がないように話しておきたい。
Aさんは、放置飼育していたわけではない。
猫すべてに名前をつけ、好物を与え、とてもかわいがっていた。

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これは、猫たちがいなくなった日に「見ると辛くなるから捨てておいてください」と言われて預かったもの。
可愛い絵柄の食器からも、Aさんの猫愛がわかる。

譲渡会の前日、FさんはAさんを仔猫たちにあわせてくれた。

Aさんはのゲージの前で、「ごめんね・・ごめんね・・」と
涙を流しながら何度も仔猫に謝った。
私はAさんの背中をなぜることしかできなかった。

独り暮らしの後期高齢者にとって、猫を失う寂しさは計り知れない。
完全室内飼いではなかったけれど、家庭内野良猫だったけれど…まぎれもなく7匹の猫たちは、Aさんの家族だった。
これは、わかってあげてほしい。

仔猫の譲渡会・トライアルと母猫ロンちゃん


Fさんと猫ともクラブの皆様のおかげで、仔猫の人慣れ訓練は順調に進み、5仔猫ちゃんは譲渡会にデビューした。

譲渡会の様子は、下記のブログを見てほしい。「おばあちゃんのねこ」と紹介されているのがAさんの仔猫ちゃんたちである。

譲渡会の様子(猫の日暮らしブログより)

5匹の仔猫ちゃんはすぐにお声掛けがあり、トライアルへ連れて行ってもらった。
私はAさんの家の窓に、脱走防止の金網を取り付けさせてもらい、ロンちゃんをAさん宅に連れて行った。

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「ロンちゃんが帰ってくると思うと、眠れなくて!」
そういうAさんは、とても嬉しそうだった。
みると、ロンちゃん専用のトイレが準備され、寝床が綺麗に作られていた。

しかし家に帰ってからロンちゃんは、暴れて家から何度も出ようとしたし、夜中も大きな声で鳴いた。

見かねた私は「ロンちゃんをうちで預かりましょうか?」と提案した。でもAさんは「ロンちゃんならわかってくれる。私の猫だから」といい、頑張ってくれた。

仔猫ちゃんたちは正式譲渡へ


3月18日すべての仔猫の正式譲渡が決まった!

仔猫ちゃんたちがもらわれていったことをAさんに報告した。すぐに返信があった。
(本文より抜粋)
今晩は、とても嬉しいお知らせほんとうに有難う御座います。
ロンちやんにも報告しますね。ほんとうにご迷惑かけ申し訳ありません
感謝です。Fさんにも宜しくお願いします。有難う御座いました。


はじめに話を聞いてから約2か月半。
猫たちは幸せになった。
南河内ねこの会のFさんには、ほんとうに感謝しかない。

母猫ロンちゃんは外出をあきらめたらしく、今はおとなしく家にいるようだ。眠るときはAさんと同じ部屋で寝ているときいた☆

省察


「庭で猫が子どもを産んだ」「野良猫を何とかしてほしい」と言う人がいる。
しかし、その多くの相談者が、愛護団体に猫問題を丸投げすることが話題になっている。
愛猫団体は、問題を抱えたものが主になるべきだという。ほんとうにその通りだと思う。
愛猫団体は、業者でも役人でもない。

しかし実際には、捕獲、手術、TNR,譲渡など一連の愛猫活動には専門知識や技能をともなうため、猫の捕獲経験を持たない者がが主導権をもつことは難しい。

今回の件でも、「何かさせてください」と、私は何度もFさんに言った。
しかし、私にできることは何もなかった。
むしろ私が手を出すと、邪魔になるのではないかと思うときさえあった。

私は、自分が持ち込んだ案件なのに何もできなかった。
すべてFさんにまかせっきりになってしまった。
このことが、今も心残りである。

愛護団体にお願いしたいこと


今回の猫問題を通じて、愛護団体にお願いをしたいことが2つある。

1.相談者にもできることを教えてほしい

短い間だったけれど、私は母猫ロンちゃんを預からせてもらって嬉しかった。
自分でも役立つことがあると思った。

相談者にもできることを、ぜひ教えてほしい。

2.高齢者の猫問題には、第三者を入れてほしい

高齢者は、昔ながらの猫の飼い方が正しいと思い込んでいることがある。そういうときに、愛護団体の説得は、プライドを傷つけ、心を閉ざしてしまうことがあるかもしれない。

第三者は、高齢者の気持ちを落ち着かせるために役立つ。。

また、寂しさから再度同じ過ちを繰り返すかもしれない。
その時は、猫を隠すだろう。

このようなことが起こらないためにも、高齢者に寄り添うことができる第三者の介入が必要だと私は思う。

9月19日追記


実は、Aさんに何かあったらロンちゃんをうちで引き取る約束をしていた。
ところが先週、Aさんからお断りの連絡があった。

足を悪くしたAさんは、息子さんのところにロンちゃんを1週間預かってもらったらしい。
すると、息子さんはもちろん奥様にもなじみ、
息子さんの方から「お母さんが飼えなくなったらロンはうちで世話するから」と
申し出があったそうだ。

「三上さん、ごめんね」というAさんの顔は、とても幸せそうだった。
私は「息子さんがだめならうちがありますから」と答えて笑った。

Aさんには話さなかったけれど、手術をし、子育てから解放されたロンちゃんは室内猫になり、かなり性格が落ち着いたらしい。だから息子さんも予後を引き受けてくれたのだと思う。

またFさんから、里親さんから送られてきた仔猫の写真をみせてもらった。
それをAさんに見せた。

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そのときにAさんから送られてきたラインだ。

これから先はどうなるかわからない。
でも今は、Aさんも猫さんたちもみんな幸せです!(^^)!

最後に


世の中にいる猫、これから生まれる猫のすべてが、幸せでありますように。
ここまで読んでくださってありがとうございました。


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